ウィリー・ウォンカ

 
僕らは、生まれたての音源、「u.l.e.p」を知らしめる作戦を練っていた。
企画を、ヤるのだ。
 
企画。ライブハウスを借りて、対バンを呼び、客を呼び、バンドの名を広げる手段。
そんなマーケティングみたいな感覚ではなくて、あくまでガチバンなら誰でも通る登竜門だと思っていた。
「こんなカッけえバンドよべるんだぜ」「こんなに集客あるんだぜ」
そんな風に暗に周囲に自分たちの力を示すこともできるし、顔合わせに打ち上げ、ただの対バンとは違いバンド通しの絆をより深めるきっかけにもなる。
 
僕らはもちろんCOCOZAで企画を打つ準備をしていた、
といいたいところだったが、会場は石山はユーストン。滋賀県最大のキャパシティを誇る「デカバコ」だ。
理由はシンプル、企画段階でまだCOCOZAの所在が不明瞭だったからだ。
なかばゲリラ的に開店したCOCOZA、そのスピードにさすがに追いつけなかった、というか。もう遅かった、というか・・・
何も、企画はこれだけじゃない。一発目の企画が県内最大キャパ。いいじゃないか。
そんなこんなで、最終的なスケジュールを確定させるフェーズまできていた。
 
「〜で、リクのあかん日は〜」
「ないです。」
笑いを含めて即答した。
そう、リクは、「灰色の工場」を辞めていた。
 
 
入社してからというものの、遅刻の嵐。さすがにこの僕でも研修中には遅刻はしなかった。
そのおかげで、社内ではキツい、三交代の部署に配属されたのだった。
三交代、すなわち不規則。土日をメインにして活動してる僕らにとって、この事実は致命的だった。
救いがあったのは、驚くほどリクにとってバンドが大切だったこと。
配属先のリズムがバンドに合わないと判断した彼は、即座に退職届を書いた。その期間なんと四ヶ月。
おいおい、僕の方が先に入って、ずっと辞めたい辞めたいと思いながらも続けてきたんだぞ。
彼は、あっという間に僕と灰色の工場の間を駆け抜けて行ってしまった。
 
そんな事実もあり、彼のスケジュールは無敵だった。
 
来たる日は、十月。
肌寒い季節にやって来る。
あとは、対バンだ。どんな風に声をかけていいかもわからなかったので、ユーストンの担当者と相談しながら進めた。
なるほど、ノルマはこうして、こういう感じで。僕らがこんなけお客さん呼ぶとして・・・・・
文系のハズなのだが最近数字の計算ばかりしてる気がするな。
 
自主企画ミニツアーを終えて。ちょくちょくブッキングライブのオファーは来ていた。
はじめはとにかく出た。ノルマを払って滋賀と京都を駆け巡る。
その中で、バンド同士のつながりもできはじめていた。
僕には、どうしても呼びたいバンドがいた。
 
その名はWOMCADOLE。まだ十代そこらの無名のバンドだった。