蝉の一生

 
七年もの間、暗い土の中で蠢いて、たった一週間の空を満喫する。
人は言う。「セミは短命だ」と。「一週間の命だ」と。
でもそんなことはない。セミは、昆虫の中ではかなり長寿な方なのだ。
人間の傲慢さを極めて感じる。自分の目に映るモノしか見ようとしない。自分の感じるモノしか感じようとしない。
あのけたたましい鳴き声でしか、「生きている」と判断をしない。
「成虫」の期間が短いのが不幸だと、どの立場で言っているのだろう。
セミにとって、暗い地面の中での生活は最高だったかもしれない。
「そんなことはない、やはり成虫期が人生のメインディッシュのはずだ。」と言うなら、たった一週間だったとしても、その期間は僕らの想像の範囲を遥かに超えた快楽があるのかもしれない。
 
「セミが鳴いてるね、ママ、うるさいよセミ。」
「そうね、でもセミはね。長い長い間暗い土の中にいて、ようやく外に出れた、とおもったら、一週間で死んじゃうの。だから我慢してあげてね。」
「ふーん。そうなんだあ。セミってかわいそうだね。」
 
 
うるせえ!!!!!!!!!!!
なぜお前が「ようやく」出れたのかを知っている。別に努力をしたのかどうか、待ちわびていたのかどうかも知らんだろう。
「かわいそうだね」だと?こっちはお前が生まれてくる前からセミやっとるんじゃい。目上を敬えクソガキが。
 
とまあ僕がセミならこんなところだろう。大きなお世話って奴だ。
 
輪廻転生に関する本を読んでから、他の生き物の人生が他人事に思えなくなってきた。
だって次の僕の人生は、もしかしたらセミかも知れないのだ。
来世でまた人間に生まれ変わるためには「五戒」ってものを守らないといけない。
不殺生、不要に生き物は殺すな。
不偸盗、物盗むな
不邪淫、変なセックスすな
不妄語、嘘をつくな
不飲酒、酒はのむな
ってとこだ。
 
僕ときたらゴキブリは殺すし万引きはしたことあるし付き合ってなくてもセックスはするし嘘はつくし酒ものむ。
なのでオールA判定で、人間に再び生まれ変わることはできないと思うのだ。
というかこんな厳しいルール。守れる人の方が少ないって思うでしょ?
その通り。だから二回連続で人間に生まれ変われた人は、類稀ない才能を得て、人生の成功が約束される。よく周りからは「人生二周目」なんて言われるけど、実は本当にその通りなのだ。
 
とにかく、セミだって、アリだって、もしかしたら来世の自分かもしれない。
だから思いやりをもたないといけない。愛情をもたないといけない・・・・・・・・・
 
 
 
「うるせえ殺すぞこの虫ケラが!!!!!!!!!!!!!!」
 
 
僕は毎度やってくるこのセミの大ブーイングがどうも苦手だった。
夏が苦手だからセミが苦手なのか、
セミが苦手だから夏が苦手なのか知る由もない。
とにかく気怠く憂鬱で、社会人になってからはソレに拍車がかかった。
できるだけ、車内や自室にこもり、冷房とお友達になっていた。
ところがどうだ。この炎天下の中僕は、ベルロードを歩いている。
皮膚の上を汗がつたって、不快極まりない。
そんな犠牲を払って向かう先は、COCOZA。
僕が運命を感じたライブハウスだ。そしてきっと冷房も効いていることだろう。
自宅から徒歩十分をかけ到着したソコには、あの黄色い看板が掲げられていた。
こんなに暑いというのに、さらに体温があがってしまう。
はやる気持ちを抑えて、砂利を踏む。
ドアを開けて中に入った。薄暗い室内。オープンイベントということもあって、人も多い。
僕は、僕にはこの違和感を見過ごすことができなかった。
だってそうだろう。これだけ文字数をかけて、いかに僕が夏が嫌いか、暑さが嫌いかを説明したはずだ。
 
なのになぜなんで、この空間は、「外より暑い」んだ?