愛しているわ、ベルロード。

 
あのCOCOZAが、彦根に、僕が住んでるこの街に、やってくる。
 
それは、衝撃的なニュースだった。
HAJIMEMASHITEツアーにでも出演したかったが、移転が被ってしまったハコ。
僕が人生ではじめて「ライブ」をしたハコ。
そのCOCOZAが選んだ次の住処が、まさか彦根だとは思わなかった。
彦根は、そこまで広い街ではない。かかっても三十分もあれば車で周れる。
「一体どこにできるのだろう。」
僕の頭はそれでいっぱいになった。彦根駅か、南彦根駅か。どちらにせよ駅の近くであることは濃厚だ。ライブハウスは駅近というのが相場で決まってる。
 
それから、僕は新COCOZAの情報を集め始めた。
知ってそうなやつに電話して、それとなく聞いてみる。
自分でも無駄なことをしてると分かってる。
どうせオープンしたら、ホームページはできるだろうし、ライブの情報は回ってくる。
それでも僕はこの「はやくどこにできるか知りたい」というワクワクを止めることができなかった。
仕事帰りに無駄にドライブして、「あれか?」「これか?」と彦根市内を右往左往した。
 
 
二週間ほど経って、遂に所在が判明した。
なんと、僕の家から徒歩十分圏内だったのだ!!!!!!!
駅近でもなんでもない。一体どういうことだろう。驚きと喜びがとことん混ざり合って、体温は急上昇した。
 
僕が住む街、彦根には、二本の「ロード」がある。
まず一つ目は「キャッスルロード」。直訳で「城の道」だ。
その名の通り、歴史深い「彦根城」から伸びる道である。景観が重視されており観光スポットにもなってる。
そしてもう一つが、「ベルロード」だ。ベルの道。一体どういうことだろう。それは来てみればすぐにわかる。
キャッスルロードから少しいくとベルロードにつながる。
キャッスルロードとは違い建物の統一感はないが、彦根市内の中では栄えている方で、コンビニ、ドラッグストア、スーパーなどなど。
住むのには困らない、むしろ便利な「道」。その両脇にはベルを模した街灯が立ち並ぶ。だから「ベル」ロード。
ベルロード、というのは通称名で、正式名称は彦根巡礼街道商店街。そう、実は商店街なのだ。
その長さ日本最長。一・六キロ道は続いている。
 
僕からしたら、なんてことないことだった。
幼い頃から国宝の彦根城とベルロードの近くで育つ。これは僕の「日常」だった。
「はじめて」ではなくなって、ただの「景色」に完全になっているベルロード。そこにブランドもクソもない。
だが、そこにCOCOZAができるとなると話は変わってくる。COCOZAは、ベルロードの少しだけ中に入った、僕の自宅の目と鼻の先に再爆誕したのだった。
 
おこがましいだろう、勘違いではあるだろう。でもなにか、運命的な物を感じざるをおえなかった。
 
「音楽をやれ」と言われている気がする。
「COCOZAでやれ」と言われている気がする。
僕の中で、さらにCOCOZAが特別なライブハウスになった瞬間だった。
 
 
COCOZAのオープンイベントが、激夏の中開催されることを知った。
ぼくらには出演のお声はかからなかった。
当然だろう、ぼくたちはCOCOZAにとって、あの金髪の社長にとって、「何者でもない」。
それは分かってるのに、なぜだろう。悔しくなるのは、歯痒くなるのは。
 
うだるような暑さだ。僕の友達は海や川、ひたすらに休日を満喫している。
八月。
素晴らしい景色があるわけでもない、
日常を忘れさせてくれる避暑地でもない。
あるのは黄色い看板と轟音。
僕はCOCOZAに行くことを決めた。