青い春、赤い血。

 
「青春」というものは、本当に年齢を重ねることによって失われていくのだろうか。
 
僕は、半分アタリで半分ハズレだと思う。
要は「馴化」なのだ。人は同じ刺激をずっと受け続けていていると、徐々に馴れ、反応は鈍くなっていく。
初めての空
初めての海
初めての音楽
初めての集団
初めての仕事
初めての恋愛
 
初めての、死
 
人生は、そういう「初めて」を減らしていく作業だとも言える。
食事にも慣れ、恋愛にも慣れ、仕事にも慣れ、としていくうちにどんどん反応は鈍くなり、
「青春」を定義づける非常に重要な項目、「刺激」が薄れていくのだ。
「刺激」が薄れると「反応」が鈍くなり、「反応」が鈍くなると「時間」は間延びする。
走り出したくなる衝動が、葛藤が、薄れていく。減少していく。
 
だが、世界中に存在する「初めて」を一生の間に全て経験することは、到底不可能だ。
ひとつに「仕事」をとってもその種類は数多。そして人生において仕事はほんの一部だ。
「青春」は、終わってしまうものではなく終わらせるものだ。
毎年、毎日、「はじめて」を経験している人の「青春」は絶対に終わらない。
 
ずっと青いまま、ずっと春のままなのだと、僕は思う。
 
 
 
「初めて」の本格的なレコーディングが終わった。
僕は達成感と疲労で、コントロールルームの隅のソファになだれこむ。
メンバーは、ねぎらってくれる。リクは寝ている。
だがまだ、「レコーディング」自体は終わっていなかった。これからサカモトさんによる、「ミックス」がはじまる。
ココに関しては、無知。彼の作業を見守るフェーズとなる。
 
「カタカタカタカタカタ・・・・・・」
疲労でいっぱいのはずなのに、僕の集中力はまだ続いていた。
室内に、キーボードの音が響く。
サカモトさんは、よどみなく、そして驚くほど高速に十指を踊らせる。
ただただ圧倒させられる。圧倒的に「プロ」を感じる。
それを感じたのは、僕だけじゃないようだった。カツキもミズキも苦笑い。
グッドでもグレートでもエクセレントでもなく、アメイジング。笑っちゃうほど早かった。
たまに、再生し聞こえてくるソレが、どんどん「音楽」になっていく。
最中サカモトさんの口数は減ったが、飽きずに見ていられた。
 
 
「はい」
数時間経って、久しぶりにサカモトさんの声を聞いた。どうやらミックスが終わったらしい。
サカモトさんはなにやら機材のツマミをいじり、僕らに確認を促した。
 
「少年ナイフ」が、再生される。
 
「カチッ」とスペースキーを押すと、波形が流れ始めた。
「シャンシャンシャンシャンドッ」
リクのドラム、キックが腹に響く。その後、僕にとって、マギュニフィセント。最上級の「はじめて」がおとずれた。
圧倒された。
 
ドラムにベースにギターにボーカル。全てが一つの「かたまり」となって、「音楽」となってぶつかってくる。
顔は見ていない。だけど確信がある、メンバーもこの感覚は一緒のはずだ。
ああやべえ、マジでやべえ。自分の音楽だから贔屓してみてるのか?きっとそうだろうな。でもどうでもいい。「カッコよすぎる!!!!!!!」
特に感動したのはコーラスだった。
少年ナイフには冒頭、本イントロが始まる前に多数のコーラスを入れたセクションがある。ほとんど、サカモトさんが音階を考えてくれたところだ。
神聖というか、自分の声じゃないみたい。声って重ねるとこんなに圧と雰囲気が出るのか。コーラスって、偉大だ。
 
あっという間の四分足らずだった。
 
 
「やば・・・」思わず声が漏れる。
やはり皆同様に、興奮しているようだった。
サカモトさんはというと、「フム」と言った感じで極めて冷静。
それもそうか、彼にとって、コレはきっと「はじめて」ではないのだろう。
 
それから、H.W.E、吠える。も同様にミックスが順調に進行。
タイトルに困ったぼくは、theULTRALEAのe.pだから、【u.l.e.p】と、安易に名前をつけた。
名前など、どうでもいい。
サカモトさんに別れをつげ、車に乗り込む。帰りの車内ではもちろん出来立てホヤホヤの「僕らの音楽」を聴く。
 
間違いなく、青春だ。ぼくは今、青春の真っ只中を走ってる。
「知ってしまえば、慣れてしまう。」そう分かっていても知りたい。進むことを止められない。
そんな僕らを、「愚か者」だと未来の僕は思うのだろう。