かねのまにまに

 

「こんなかかんの・・・・・?」
 
僕の精神はパンク寸前だった。
晴れて「音源制作」が決定した僕ら。theULTRALEAという名前を更に広げる可能性を秘めた希望。
それに向かって準備をしていた。
 
ところがどうだ。
早速壁にブチ当たった。
高い。
高すぎる。舐めていた。
「レコーディング 関西」と検索しヒットしたスタジオを比較する。
京都、大阪、、やはり都会にいけばいくほど数も多いんだな。
レコーディングスタジオの単価は大体時間制。
八時間パックや十時間パックのコースも用意されている。
「割引き!」「お得!」なんて文字がポップなフォントで液晶に映し出されているが、僕は騙されなかった。「全然可愛い値段じゃない。」
一日借り切って、四、五万円。ドラム、ギター二本、ベース、ボーカル、コーラス。全部録るのに一体何日かかるんだ?
仮にそれぞれ一日で終わったとして?一日四万円だとして?六×五で三十万・・・。四人で割ったら一人七万!!!!!!!!ありがとう!!!!!!
更に更にそれだけじゃない。レコーディングの工程には未開の地が存在する。そう、ミックス・マスタリングだ。あまり何をするのかは分かっていないが、それも必要なプロセス。これも別料金なのだろうか・・。ああ、そうだ、あとプレス代だ。
 
 
僕は携帯を投げた。しょぼくれたベッドで跳ね返ったあと、彼は動かなくなった。
「バンドって金かかるなあ、やっぱ。」
急に周りのバンドマンが凄く思えてきた。
バイトしてバイトしてバイトして、つぎこんでつぎこんでつぎこんで、それでも実る可能性はゼロに等しい。
そんなギャンブルにBETし続ける。そんな価値が、、、、、、
 
ある。あるのだ。
どれだけ金がかかっても、どれだけ時間がかかっても、どれだけ可能性が低くても、
この世界にはどうしようもないほどの「魅力」があった。
どうしようもないほどの、「希望」があった。
 
僕は起き上がって、もう一度携帯を手にした。
数あるレコーディングスタジオ一覧のひとつに僕の目は止まった。
「これって・・・」
僕は起き上がり、CDラックを漁った。お目当てはSwimy。
「あった。」急いで中身を確認する。歌詞ページの一番最後。クレジット欄に僕の欲しい情報は存在した。
 
「スタジオラグ 西院店」
やっぱり、これだ。
 
僕の目標の一つであるバンドSwimyがレコーディングを行った場所。
何回も聴いたCDが作られた場所。
勿論メンバーに相談すべきことだが、僕のなかではほぼ決まってしまっていた。
 
僕らの音源は、ラグで作る。あとは予算だ。
季節はボーナス間近。足りないメンバーがいたら貸すことだってできる。
僕の音楽が、CDになる。
かかるお金も、しなくてはいけない手続きも、それを想像するだけで全て吹き飛ぶような気がした。