時間を代償に。

 
それから僕らは二ヶ月をかけ、計五箇所のライブを周った。
もちろん理想とは違い、悔しい想いもした。
ガラガラの客席、誰ともつながれないライブ、ダメダメなライブ。
だが、少しずつ、重ね上げていた。バンドとしての知り合いも、ライブハウスも。次のブッキングも。
なによりも、バンドとして過ごしたメンバーの時間だ。何度もいうが、バンドははじめからバンドなのではない。
こうして時間をつみあげて、「バンドになっていく」のだ。
 
自分たちで計画したツアーが終わり、一息ついた僕ら。
少し生まれた繋がりから、ブッキングは多少、来ていた。だが、僕らは受動的になっている場合じゃない。「何か」行動を起こす必要がある。
 
 
 
ある仕事がえり、僕はSwimyのCDを聴いていた。レコーディングをして、プレスされて、ピカピカに輝いている。かれらが昨年ツアーを主催した際にリリースされたものだ。
ぼくらのなんちゃってツアーと違って、県境をまたぎ、全国を周る正真正銘の「ツアー」だ。集客も、対バンも、僕らとはまるで違う。
タクミは、彼はいつも僕の先を行っている。眩しい。うらやましい。
相変わらず、いつになったら追いつけるのだろうか。歯痒い日々だ。彼らの後をおっていて、本当に彼らに辿り着けるのだろうか。
それでも、他にアイデアなんてなかった。そういうものなんだと思う。後から始めた者は、先人の後を追うしかない。
つまり僕らが打つ次の一手は、「音源」だ。
 
CD音源、
ガチバンドが必ず通る道だ。
レコーディングスタジオにて、一つの楽曲を、CDで聞ける「音源」にする。
ライブ会場以外で自分たちの音楽を届けることができ、「売れる」。
売ることによって、バンドには収益が発生し、(勿論バンドの収益点はそこだけではない)更に自分たちの活動にBETできる。
そうしたサイクルを経て、バンドは大きくなっていく。
無論、つくっても売れないバンドもいる。それまではひたすら安い飯を食って、バイトした金をつぎ込む。その繰り返しだ。
やらない者にチャンスはない。つまり「本気」でバンドをやってる僕らにとって、「音源作り」は必須事項だった。
あとは「時期」。今の僕らにとって、適したタイミングだろうか。
音楽はある。ひとつの挨拶がわりのツアーは終わった。ふさわしい時期だと個人的には思う。だが、メンバーはどう思うだろうか。
僕とリクは別としても、カツキとミズキは学生だ。c.u.dの記憶が舞い戻る。
ただでさえ、ライブにスタジオに機材。バンドには金がかかる。
彼らに、金銭的な負担をここでさせるべきだろうか。
もっと下地を作って、集客できるようになってから満を辞して動くべきだろうか。
 
アレコレ考えて、それでも僕はCDを作りたかった。
先をいってるバンドのあとを追いかけたかった。
そしてなにより、今は生でしか聴けない僕らの音楽を、高い品質で「僕が」聴きたかった。
 
「音源つくろっか」
スタジオの日、できるだけラフに振る舞って言った。だが内心、ビクビクしていた。
ところがメンバーの反応をみて、僕の葛藤は杞憂だったと思い知った。
 
リクは「作りましょう!」と先陣を切った。
カツキもミズキも賛成してくれた。
そうだ、彼らも音楽が好きで、このバンドをやっているのだ。
そこに学生か就職しているかなど関係がない。皆、それぞれ何かを犠牲にしてこのバンドをやっている。
彼らを学生だとカテゴライズして、変な気遣いをした自分が愚かだった。失礼だった。
彼らは「メンバー」だ。その気持ちに差異などない。
 
 
こうして僕らの音源制作が決定した。
まだ未タイトルのソレに出会うため、僕らは動き出した。