ライブハウスにいる。

 
「顔合わせ」というモノが対バンイベントには存在する。
 
その日の注意事項であったり、バンド紹介だったりを一同を介して話すセクションだ。改めて、「バンド」として周囲に挨拶をする時間なので、非常に重要なモノと言える。勿論僕らc.u.dもガンクビ揃えて、その場に参加したわけである。
 
「おはようございまあああす!」
 
なんともポップな声がホールに響いた。声の主はムラタ。あれ、イメージと違う。もしかして、良いやつなのか?面白いやつなのか?
 
「今日は〜フウキと、あ、この人がフウキなんですけど、共同主催ということでぇ、ありがとうございまあす!いぇい!」
 
どうやら僕の予想は半分当たったみたいだ。面白い奴なのかどうかはさておき、悪い奴ではなさそう。そして、良い感じにすべっている。いや、良い感じではないかもしれない。
 
ホールに集まった人間を観察すると、やはり個性が強い気がする。革ジャンでバチバチに決めた奴、派手髪、なんかすげーだらしない奴もいる。高校生なのかな?すごく萎縮してる様に見えるし芋くさいやつもいる。その中にいる一人の男に僕の目は止まった。
 
「動画のやつだ」
 
半目で、眠そう。身長は低く中性的な顔立ち。一切癖のない直毛がソレを更に際立たせている。ソイツは、ムラタらより少し年齢が上なのだろうか。顔合わせに間にもちょいちょい突っ込んで、場を掌握していた気がする。
 
滞りなく顔合わせは終わり、ソイツが僕らの方へ来た。
 
「よろしくお願いしますーマツオカフミヤと申しますー」
 
なんとも眠たく、少しの冷たさを感じさせる声だった。少しの間目が合い、何かお互い勘ぐりあっているような、そんな気がした。
 
そつなく会話をして、あと数分もすれば会場はオープンし、「ライブ」が始まる。
 
体調はといえば、いっこうに良くはならない。だけど、初ライブだというのに、楽屋でこもりきりというのもどうなんだろう。そして、このライブハウスの楽屋はそんなに広くはない。そして、何より、ライブをみたい。僕は物販席の隅で一人、徐々に人が増えていくホールを眺めていた。ルナの知り合いが多数来て、その対応にルナは追われていた。いや、彼女は「対応」だなんて思っていないだろうけど。
 
トップバッターは「GINGER」という高校生バンドだった。
 
顔色からは緊張感が伺える。だけど、上手かった。
 
高校生ってこんなに上手なんだ。あんなに上手いならもっと堂々としたら良いのに。ライブをみるのは逆効果だったかも。余計緊張する。
 
あっという間に出番は終わり、次は、「アイスクリーム」
 
まず、ボーカルがでかい。プロレスラーみたいだ。ベースがなぜかズボンをはいていない。ギターはなぜか一曲目の途中でもう汗だくだ。すげえチグハグなバンドだった。演奏は、僕がいうのもなんだけど、すげえ下手だった。多分、僕らよりも。
 
だけど、なぜか引き付けられるモノがあった。曲は全部聴いたこと無いし、多分オリジナル。だからなのかな。青春パンク、というのかな。銀杏BOYZみたいな。下手だけど、気持ちがこもってて、荒々しいけど、なんか好きかもしれん。こういうの。やりたいとは思わないけど。
 
一バンド目をみたときは、どこか自分たちと比較して終始みてしまったけど、このバンドはそうじゃなかった。最後には、このバンドの音楽をまっすぐ受け止められた気がした。ギターは弦を二本も切って、ソレでもライブをやり遂げた。ベースは最後までパンツだった。
 
そして、遂に僕らのステージが始まる。どう考えても全員緊張している。顔をみなくても分かる。体調の悪さと緊張で、吐きそうだった。
 
「アイスクリーム」の機材搬出を待って、僕らの機材を運び込む。
 
メンバー内の、会話が無い。
 
一見、無駄のないように準備をしていくが、心ここにあらず。
 
ルナの友人たちは、最前列を陣取っている。
 
大丈夫か、コレ?