金色の出会い

 
ああ、そうそう。ライブもすることだし、cloudy under dogの公式Twitterを作ったんだった。まだ誰が呟く、とかは決めてない。けど、みんな荷物とか運んでくれたし、やっておくか。
 
僕はライブ情報と簡単な挨拶の言葉を添え、ツイートした。
 
こんな感じか。
 
出演バンドの内の一つ、Junkにフウキとムラタ(第一印象が悪いので、脳内では名字で呼ぶことにした)が所属しているらしい。
 
youtubeで、一度動画をみたことがある。
 
カッコいいロゴ、中性的な見た目のボーカル。youtubeへの動画のあげ方すら知らない僕は、この名前の知らない彼を羨望していた。年は一個下らしい。すげえな。今日コイツと共演することになるのか。鼓動が早くなる。
 
他のバンドは・・・・・というと、「アイスクリーム」ってのがカキゾエと知り合いで、僕らと同じく今日初ライブらしい。
 
「カイさん、リハーサルですよ」
 
そんなことを考えてると、カツキの声がした。本番前に、音量の設定とかをするのがリハーサル、ソレくらいは知っている。
 
機材を持って、ステージに上がる。前にリハをしていたのは、確か本番とリハは逆順だったはずだから、「Hi-energy」というバンドだ。ボーカルは身長が高く、目鼻立ちもくっきりしていて、革ジャンを着ている。年は同い年くらいか。僕はリハでこんなにも緊張しているというのに、なんと堂々としていることか。片付けをしながら、メンバーだったりホールにいる他のバンドマンだったりとワイワイ話している。考えられない。
 
そうこうしている間に片付けはすみ、僕らが準備をする時間になった。
 
すごい威圧感だ。自分の髪の毛一本一本までみられている様な、そんな緊張感がある。周りが目に入らない。ホールには何人かのバンドマン。アカン。ダメだコレ。体調も悪いしで、ダメだ。
 
「じゃあ、女の子〜。スネアからで」
 
少し掠れた、低音の効いた声の主の方をみて、ギョッとした。
 
金髪に染めた長髪を肩下まで垂れ流した、五、六十代の男がそこにいたのだ。
 
「なんだこのパンチ力、コレがライブハウスなのか・・?」
 
後から聞いた話だが、その方こそがこのライブハウス「COCOZA」の店長で、周囲からは「社長」と呼ばれていた。なぜ店長なのに社長なのだ?という浅い疑問は置いておいたとしても、なぜ、店長が音響をやっているんだ?そういうのって若いスタッフとかがやるもんじゃないの?とにかく怖い。年齢とか見た目とか、そういったモノからではない「根源的存在感」を、そこから感じた。
 
「社長」が指示を出し、それぞれのメンバーが音を出していく。指示を聞くだけなら簡単だ。でも僕は知っている。この後に、曲を演奏するんだ。僕たち以外にはまだ誰にも聞かせたことのない「オリジナル曲」を。ていうかルナのことを「女の子」ってなんなんその呼び方。いちいちおもろいな。
 
「じゃあ曲で〜」
 
「社長」は僕たちに興味がなさそうだ。その態度が逆に緊張感を煽る。そうだ、カツキだ。カツキはバンド経験が豊富だ。リハなんて何十回もやってきただろう。カツキの方を見た。少し強張った表情で俯いてる。え?もしかして緊張してる?なんでなん?もう頼りになるのはカツキしかいないのに。そうこうしている間に、ルナのドラムカウントがはじまり、「サーチライト」が始まる。(事前にリハで何をやるかは決めていた。)
 
 
 
すごい。いつもより、全部の音が大きい。なのにクリアに一つ一つが聞こえるのだ。そうか、僕は今ライブハウスのステージで演奏しているのか。
 
そのおかげなのか、熱で頭が回らないからなのか、リハーサルは一瞬で終わった。
 
「社長」は愉快に、「女の子はもっと「ドゥン、パッ!ドゥンドゥンパッ!」こうやってやらなあかんでえ」なんてアドバイスもくれた。良かった。思ったよりも厳しい人ではないらしい。
 
そのあとは、他のバンドのリハを見て、会場のオープンを待った。
 
相変わらず体はいつもより熱いけど、リハという一つのピークを超えて、心だけは少し楽になっていた。